会務NEWS Vol.651
消費者保護委員会
担当副会長 志部 淳之介
去る1月26日、マックスプラント研究所のトム・ヒック研究員をお招きして、「持続可能という視点から考える契約の自由」というテーマで勉強会を開催いたしました。「持続可能性」と「契約の自由」がどう繋がるのか、タイトルからは全く内容が想像できませんでしたが、まとめると次のようなものでした。
ヒック教授の議論の出発点は、私法によって公法領域の規律を動かすという大胆なものです。背景には、持続可能な社会を作るためには、現状の政治や公法の規律では不十分という問題意識があり、この状況を私法、特に「契約法」を用いて打開するという発想です。
ヒック先生のアプローチは、第一に、特定の行為について法的な権原が付与されていたとしても、その権原がより上位の規範に抵触する場合、違法と判断されるというものです。国家が公表したCO2排出目標を達成できなかったと認定されたときは、一定の不作為が違法評価を受ける等を具体例に挙げました。第二のアプローチは、信義則や権利濫用の利用です。例えば郵便契約など、人々のニーズと依存関係がある契約類型において、契約締結を拒まれたとき、契約拒否自体を違法と認定する考え方です(ニーズ主導型の契約法の利用)。
出席者からは、「持続可能性」の定義が不明確である、私法上契約の拒絶が違法となる場合の具体的帰結(契約締結の強制?条件や内容はどう決まる?)等の厳しい質問がでました。そもそも私法を用いて、政策を変えるという発想自体が日本では珍しく、政治的な主張を表明することを嫌う我が国への採用は難しいのではないかと個人的には思いました。これに対しては、その問題は承知しており高いハードルが存在するが、弁護士や研究者が緻密な議論を組み立てること、一定の不作為に責任を負わせるというシンプルな構成もあり得ること等で解決していく問題との回答がありました。
今回のテーマは大胆かつ難解でしたが、各国の研究者の方々と交流する機会がもてるのは良いことだと思いました。