日弁連理事会報告

2025年度第11回理事会

会長 池上 哲朗

【開催日】 2026年2月19日(木)、20日(金)
【場 所】 弁護士会館1701会議室
 詳細な議事録は日弁連の会員専用サイトの「日弁連情報」→「理事会報告」コーナーに掲載されます。

冒頭
☆渕上会長挨拶

  •  先に行われた総選挙の結果は日弁連の今後の活動に大きな影響を与えるものとなった。改憲勢力が3分の2を超え、スパイ防止法も提案される見込みであり、日弁連の考え方を国民にしっかりと理解してもらう必要がある。
  •  年度末を目前にし、意見書に加え民事裁判手続、刑事裁判手続のデジタル化に関する審議等も予定しており、スケジュールが密となっているが、充実した審議を行いたいのでよろしくお願いする。

【1日目】

  • 報告事項1 会務報告の件【笹川副会長(鹿児島弁護士会)】
     鹿児島には2つの世界自然遺産(屋久島・奄美)があることを踏まえ、世界自然遺産の認定基準に基づき屋久島と奄美の環境文化について報告された。
  • 令和8年度・同9年度会長予定者挨拶
     理事会において松田新会長が次期会長として挨拶をされた。
  • 審議事項28 後任事務総長の件
     松田新会長から、後任の事務総長として神奈川県弁護士会の芳野直子会員(43期)を推薦するとの提案があり、神奈川県弁護士会の畑中会長からも推薦の辞があった。後任事務総長として理事会で承認された後、芳野次期事務総長から挨拶があった。
  • 要請事項1 死刑制度についての国会議員要請に関する件
     「日本の死刑制度について考える懇話会」が、早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置することを提言したことを受けて、3月理事会の日程に合わせて地元選出の国会議員に対して面会の上「公的な会議体を設置すること」に理解を求めてほしいとの要請がなされた。
  • 審議事項21 国際司法裁判所の勧告的意見を受けて、改めて気候変動政策の強化を求める意見書案の件
     国際司法裁判所は2025年7月に「気候変動の深刻かつ広範囲に及ぶ影響は緊急的かつ継続的な脅威であり、気候系及びその他の環境の保護無しには人権の完全な享受を確保できないこと、国際法上、国家には、気候系を保護するための適切な措置を採る義務があること」等を指摘した勧告的意見を出しており、それを踏まえて国に対し、気候変動政策を抜本的に強化するよう求める意見書
     理事からは原子力発電を廃止すべきという日弁連の従前の立場を理由中に明記すべきであるとか、再生可能エネルギーの割合が高くなると電気料金が高くなるのではないかといった意見が出された。
     修文は執行部に一任することで可決・承認された。
  • 報告事項7 解説「弁護士職務規程」の改訂の件
     第4版が完成し、今後会員に配布予定であることと、主たる改訂内容が説明された。
  • 審議事項2 取調べの可視化本部設置要綱中一部改正の件
     本部の存続期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項8 日弁連行政問題対応センター設置要綱中一部改正の件
     センターの設置期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項6 倒産法制検討委員会設置要綱中一部改正の件
     同じく委員会の設置期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項11 若手弁護士サポートセンター設置要綱中一部改正の件
     同じくサポートセンターの設置期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項15 銀行口座開設における在留カード等の提示に関する人権救済申立事件に関する要望書案の件【継続】
     りそな銀行に対し、特別永住者から銀行口座の開設の申込みを受けたとき、店頭での申込みの場合かオンラインによる申込みの場合かを問わず、特別永住者であるという属性のみを理由として、一律に特別永住者証明書の提示を必須のものとしないよう要望するという内容のもの。
     金融庁FAQでは休眠口座が不正利用されていることに鑑み、在留期間の定めの有無を確認することには正当性があるとされており、当該観点から複数の理事から意見書に反対の意見が表明された。採決の結果、賛成多数で可決・承認された。
  • 審議事項5 弁護士業務におけるマネー・ロンダリング危険度調査書(第9版)案の件
     マネー・ロンダリング危険度調査書が改訂され第9版が完成し、内容につき提案通り可決・承認された。今後HPにUPするので会員に周知して欲しいとの要請がされた。
  • 審議事項3 黙秘権を行使している被疑者の意思に反する取調べの規制を求める意見書案の件
     理事からは特に反対意見はなく、修文は執行部に一任することとして可決・承認された。
  • 審議事項27 現在、「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書案の件
     インテリジェンス機関の監視権限とその行使について、厳格な制限を定めて独立した第三者機関による監督を制度化すべき、インテリジェンス機関の増強につながる立法については、立法事実が確認できず、重要な憲法上の人権侵害につながる可能性があり、行うべきではないといったことを内容とする意見書
     まだ具体的な法案は提出されていないが、今後あっという間に法案化される可能性も否定できないことからこの段階で発出したいとの説明があった。
     理事からは「行うべきでない」「立法事実が確認できない」との表現では国民の理解が得られないという意見が出たため、一旦修文して2日目の理事会に再上程することとなった。
  • 審議事項25 業務広告に関する指針中一部改正の件
     日弁連総会で業務広告に関する規程が改正されたことを受けて、指針を改正するもの。
  • 要請事項7 弁護士業務広告に関する規則等の整備及び改正について
     上記と同様、日弁連総会で業務広告に関する規程が成立したことを受けて各単位会で会内規則を定めるためのモデル案を配布するもの。日弁連では相談窓口を設けているので、各単位会で規程、規則を整備して欲しいとの要請がなされた。
  • 審議事項7 日本知的財産仲裁センターのアジアドメイン名紛争処理センターへの加盟の件
     仲裁センターは現在JPドメイン(.jp)の紛争処理を実施しているが、トップレベルドメイン(.com)の紛争も取り扱いたい、そのためにアジアドメイン名紛争処理センターに正式に加盟する必要があるので、承認を求めるというもの
     提案通り可決承認された。
  • 法曹養成制度改革実現本部全体会議
     情勢報告として広島弁護士会での謎解きイベントが紹介された。令和7年の司法試験・司法試験予備試験の結果及び司法試験のデジタル化(CBT試験)について報告があった。
     その他、地方弁護士会での短期就業体験、法曹の魅力発信に向けた取組(8チャレ)について説明があった。
  • 法曹養成制度改革実現本部設置要綱中一部改正の件
     本部の存続期間を2027年3月31日まで1年間延長するもの
     提案通り可決・承認された。
  • 報告事項5 第79期司法修習生等に対する採用に関する協力要請の件
     日弁連から各弁護士会に対し法律事務所の内定通知は合格発表後とするよう要請を行ったことについて、2月6日付けで修習生・法科大学院生等に対して通知を行ったことが報告された。
  • 報告事項3 侮辱罪の施行状況に関する刑事検討会に関する件
     侮辱罪厳罰化の法改正から3年が経過したことを踏まえ、侮辱罪の規定がインターネット上の誹謗中傷に適切に対処することができているか等について、検討会の検討状況が報告された。依然としてインターネット上の誹謗中傷は深刻化しているが、3年しか経過しておらず、懲役刑が言い渡された事例も少なく、現時点では更なる法改正の必要性は高くないという取りまとめがなされたとの報告があった。
  • 業際・非弁・非弁提携問題等対策本部 第2回全体会議
     非弁取締活動に関するブロック協議会、非弁提携弁護士問題情報交換会及び隣接士業を巡る情勢について報告がされた。
  • 審議事項1 国選弁護本部設置要綱中一部改正の件
     本部の存続期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項13 弁護士費用保険に関する紛争解決機関の設置及び手続に関する規則中一部改正の件
     取扱紛争の追加、添付書類の提出方法の拡充、和解あっせん手続の再開、裁定委員報酬の増額、複数起案の場合の報酬増額及び期日又は手続開始前に事案が終了した場合の報酬の支払いについて、それぞれ規則ないし細則を改正するという内容
     提案通り可決、承認された。
  • 審議事項19 第68回人権擁護大会の行事及びその主題等の件
     同19-2 第68回人権擁護大会運営委員会設置の件
     10月8日に仙台で開催予定の次年度の人権擁護大会のテーマとして、(第1分科会)旧優生保護法は何を残したか~声なき痛みを見過ごさない社会を目指して~、(第2分科会)福島原発事故から15年~人間の復興・再発防止をどうするか~、(第3分科会)貧困を克服し、すべての人が自分らしく生きられる社会の実現を目指して~ケアの社会化とジェンダーの不平等を考える~、がいずれも承認され、運営委員会を設置することも承認された。
  • 審議事項14 新人弁護士等養成事務所要請支援補助金の返還免除の件
     3つの公設事務所所長に順次応募した弁護士が、いずれも選任されなかったため、支援補助金の返還を免除するという議案。提案通り可決・承認された。

【2日目】

  • 理事特別発言 九州弁護士連合会 岡田理事(長崎)
     今年度の人権擁護大会開催地として、大会の振り返りや反省点などを述べられた後、長崎の見どころを紹介された。
  • 審議事項4 医療観察法を含む精神医療に関する法制度の再編を求める意見書案の件
     医療観察法を改正し、同法に基づく入院処遇を短縮・解消していくとともに、将来的には医療観察法を含む、精神障害のある人のみを対象とする緊急法理により許容される限度を超えた強制入院制度の廃止を目指すことを内容とする意見書
     修文は執行部に一任するとして可決・承認された。
  • 要請事項5 「ひまわりほっとダイヤル」の運営に関する調査の件
     第1回照会の回答結果を踏まえ、2027年4月以降に初回30分の相談を無料とするか否かについては、各単位会の判断に委ねるとの要請がなされた。
  • 要請事項2 民事裁判手続等のデジタル化に関する件
     改修後mintsの利用に関する最高裁からのお知らせの内容が報告された。補助者アカウントの作成については、日弁連の会員専用サイト上に掲載している登録フォームから申請できることとなった(4月30日まで)。
     TreeeSについては、mintsのアカウントは利用できず、補助者アカウントも利用できない。TreeeSのアカウント登録の際にはGビズIDと連携してユーザ登録をすれば事務職員もGビズメンバアカウントを利用してTreeeSを操作することが可能となるため、連携が推奨されるとの報告があった。
  • 報告事項10 最高裁が検討する機動的審理運営に関する件
     令和6年12月からさいたま地家裁秩父支部、神戸地家裁柏原支部で民事訴訟に関し試行が始まり、その後現時点で17庁まで拡大されているが、民事訴訟のフェーズ3が始まることを踏まえ、試行段階から本格実施段階へ移行するとのお知らせが最高裁からあったことが報告された。
  • 審議事項23 予備費取り崩しの件
     当番弁護士・当番付添人制度の初回接見の件数が、想定を大きく上回る見込みであり、科目間流用を行ってもなお予算超過となる可能性があるため少年・刑事財政基金の予備費を概算で6450万円取り崩して支出するというもの。
     提案通り可決・承認された。
  • 審議事項10 司法修習費用問題対策本部設置要綱中一部改正の件
     本部の存続期間を2027年3月31日まで1年間延長するもの
     提案通り可決・承認された。
  • 審議事項22 憲法問題対策本部設置要綱中一部改正の件
     本部の存続期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項16 千葉刑務所拘置区における閉居罰に関する人権救済申立事件についての勧告書案の件
     閉居罰の期間中、日中時間帯は居室内に着座の上一定の姿勢を保持するよう事実上強制し、裁判資料の閲読制限や刑事事件の弁護人との手紙の発受を禁止することが人権侵害に該当するものとして千葉刑務所長に対し勧告を行うもの
     修文は執行部に一任することで提案通り可決・承認された。
  • 審議事項17 千葉刑務所拘置区における書籍の直接購入に関する人権救済申立事件についての勧告書案の件
     大学受験の参考書や憲法の基本書等の書籍の自弁購入を申し出たことに対し不許可にした処分が人権侵害に該当するとして千葉刑務所長に対し勧告を行うもの
     修文は執行部に一任することで提案通り可決・承認された。
  • 審議事項18 千葉刑務所拘置区における面会制限に関する人権救済申立事件についての要望書案の件
     申立人の計109回にわたる面会の時間が、どれも最長でも25分であり処遇に関する規則に定める30分に達したことが1回もなく、これは面会の自由を侵害し、またはそのおそれがあったものと認められると認定して要望書を発出するもの。
     修文は執行部に一任することで提案通り可決・承認された。
     なお、審議事項16から18はいずれも同一人物からの申立事件。
  • 要請事項3 事業承継・引継ぎ支援センターとの意見交換会等の開催の件
     2021年度から各地の事業承継・引継ぎ支援センターと単位弁護士会との間で意見交換会・勉強会が開催されてきたが、2026年度も引き続き開催して欲しいとの要請がなされた。
  • 要請事項4 2026年度「事業承継・引継ぎ支援センター及び日本政策金融公庫との連携事業」の実施等の件
     各単位会に対し、「事業承継・引継ぎ支援センター及び日本政策金融公庫との連携事業」を実施すること、案件に弁護士の関与を実現するため必要な体制整備を行うよう要請するもの。
  • 審議事項12 日弁連中小企業法律支援センター設置要綱中一部改正の件
     現在の委員会の取組内容や活動の実態に合わせるため、組織及び構成を改正するという内容。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項24 綱紀委員会委員及び同予備委員の委嘱の件
     執行部の提案通り可決・承認された。
  • 審議事項27 現在、「スパイ防止法」として制定に向けた動きのあるインテリジェンス機関強化法制及び外国代理人登録制度についての意見書案の件
     1日目の審議において理事から出た意見を踏まえ、意見書案の「立法事実が確認できない」との表記は削除し、「反対である」との表記を「慎重な審議を行うべきである」との表記に修正する等改訂した意見書案が提案された。
     昨日、3月中旬にも国家情報機関の設置に関する法案が提出されるとのマスコミ報道がなされており、待ったなしの情勢であるので、速やかに発出したいとの説明があった。
     理事からは今後の情勢も見極めて発出は3月にすべきではないか、逆に速やかに発出すべきであるといった意見が出た。会長からは意見書を発出すれば、意見書があることで適時適切な会長声明を出すことができるので、執行部としては本日発出することが妥当と考えているとの説明がなされた。
     修文は執行部に一任することで可決・承認された。
  • 総合法律支援本部全体会議
     3月から法テラスに関する有識者検討会が開催されることとなったとの報告があった。離婚事件の法テラスの報酬の増額等も課題として検討していくこととなる見込み。自己破産事件に関する業務量調査に協力して欲しいとの要請がなされた。3月19日に日弁連で開催される法律扶助シンポの周知と参加も要請された。
  • 報告事項4 刑事デジタル法の成立に伴う訴訟に関する書類のデジタル化に対応するための最高裁判所並びに法務省及び最高検察庁との協議状況に関する件
     令和9年3月末までに施行が予定されている刑事デジタル化法に対応するシステムとして裁判所はLinKage(リンケージ)を開発中。リンケージを利用するためにはGビズIDと連携させることが推奨されている(TreeeSと共通)。GビズID取得に向けた周知・案内等は令和8年7月以降を想定しており、その習熟準備・実施は同年10月から、翌令和10年3月から改正法施行なので、現時点でも相当慌ただしいスケジュールとなっている。検察庁からの証拠開示については、裁判所とは別の独立したマイクロソフトのSharePointを利用することが予定されているとの報告があった。
  • 報告事項8 依頼者見舞金支給決定に関する件
     預り金横領事案に対し250万円の支給決定がされたことが報告された。本年度の支給金額は計723万円(昨年度は5148万円)。今年度は比較的低額となっているが、現在審査中の案件で次年度は大幅増になる可能性があることが報告された。
  • 要請事項6 刑事裁判の法廷における手錠・腰縄の運用に関する件
     本年1月27日付けで、刑事裁判の法廷における手錠・腰縄の新しい運用に関する最高裁からの通知があり、その内容が報告された。日弁連としては一歩前進ではあると評価しているが、裁判官からも手錠・腰縄姿を見られないようにしてほしいよう今後各単位会において裁判所側と協議して欲しいとの要請がなされた。
  • 再審法改正実現本部全体会議
     担当副会長及び鴨志田室長から法制審の再審法改正案が部会で承認(日弁連選出委員3名は全員反対。犯罪被害者代表の山本委員も反対した)され、総会でも承認(反対4名)の上、法務大臣に答申されたことが報告された。
     総選挙により立憲民主党の議員を中心に議連の加盟者数が大幅に減少した。新人議員に対して議連への入会と2月25日開催予定の院内集会への参加を働きかけてほしいとの要請がなされた。
     今後は自民党内の司法制度調査会等で審査を受けるのが最大の山場となり、3月の中旬から下旬に開催される見込み。そこに議連所属議員に参加してもらう必要がある。
     単位会の会長声明の発出についても状況を確認してタイミングを見ながらお願いしたいとの要請がなされた。
  • 審議事項20 貧困問題対策本部設置要綱中一部改正の件
     本部の存続期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項26 秘密保護法・共謀罪法対策本部設置要綱中一部改正の件
     目的に「国民の監視につながる法制」に対する対策を追加するとともに、本部の存続期間を令和8年5月31日から令和10年5月31日まで延長すること等を内容とする改正。提案通り可決・承認された。

報告事項9 最高裁判所後任裁判官の推薦理由の件
  最高裁判所裁判官に選任された阿多弁護士(大阪)の推薦理由が報告された。

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