会務NEWS Vol.657
若手会委員支援委員会
副委員長 今井 良輔
「依頼者からの過剰な要求に疲弊している」「休日のメール通知が気になって休まらない」──そんな悩みを抱える先生方も多いのではないでしょうか。先日、弁護士であり臨床心理士でもある小林哲平先生(大阪弁護士会所属・67期)をお招きし、「依頼者対応のストレスを軽減させる!いますぐできる弁護士の自己防衛とセルフケア」と題した講演会が開催されました。
「良好な関係とは、何でも言うことを聞いてあげることではありません」。小林先生が第一部で特に強調されたのは、心理学における「枠組み」の設定でした。依頼者対応をする時間帯や場所、ルールの境界線を明確に引くこと。そして、いざとなれば「辞任」という選択肢を持っておくことが弁護士心理において極めて重要であることをご説明いただきました(委任契約時にこの「枠組み」を明記した「重要事項説明書」の活用が適当であるとして、実際に小林先生が作成された説明書もご共有いただきました)。一見ドライに聞こえるかもしれませんが、これこそが依頼者の過度な依存やトラブルを防ぎ、結果的に無理なく良好な関係を築くための「最強の盾」となることを学ぶことができました。
第二部では、ストレスへの具体的な対処法の実践が紹介されました。問題を解決するだけでなく、「他人に話を聴いてもらう(情動処理型)」「マインドフルネスや散歩を取り入れる(ストレス解消型)」など、対処のカードは多ければ多いほど良いそうです。
しかし、数あるテクニック以前の大前提として小林先生が熱く説いたのは「睡眠・運動・食事」の徹底です。休日に仕事のメールを見るのをやめ、スマホを置いて散歩に出る。腹式呼吸をする。この当たり前で地道な身体的アプローチこそが、脳の疲労を取り除き、弁護士のパフォーマンスを根底から支えてくれるのです。
「依頼者を護るためには、弁護士自身の心を護っておく」。この言葉が深く胸に刺さりました。身を粉にして24時間対応することだけが弁護士の美徳ではありません。自らのメンタルに投資し、「戦略的」に休むことの重要性を痛感させられる、極めて実践的な講演でした。
日々奔走される先生方にこそ、まずは今日の帰り道、「スマホを見ない時間」を作ることから始めてみてはいかがでしょうか。