日弁連理事会報告

2025年度第12回理事会

会長 池上 哲朗

【開催日】 2026年3月18日(水)、19日(木)
【場 所】 弁護士会館1701会議室

 詳細な議事録は日弁連の会員専用サイトの「日弁連情報」→「理事会報告」コーナーに掲載されます。

冒頭
☆渕上会長挨拶

  •  本年度最後の理事会。執行部は現年度から次年度への引継ぎが順調に行われている。会長任期中の心残りは2点ある。1点目は再審法改正が実現できなかった点である。2点目は選択的夫婦別姓制度であり、この点については実現が従来より遠のいてしまったのは残念である。他方で、新入会員ゼロワン問題への対策として就職活動に関して要請文を発出したこと、預り金規程の改正、家事調停官の拡充、人権擁護大会での宣言など自分なりに一定の成果を上げたのではないかと思っている。

【1日目】

  • 報告事項1 会務報告の件【水田副会長(岡山弁護士会)】
     3月8日は国際女性デーであるが、日本はジェンダーギャップに関する指数が国際的にも下位である。他方、アイスランドはジェンダー平等の点では長年1位であり、その要因は女性が団結して地位向上の運動を行ったことにあること及びそれを記録した「女性の休日」という映画があることが紹介された。
  • 報告事項6 「事件動向調査」に関する第5次報告書の件
     日弁連の司法調査室の民事・行政グループが主体となり、2年毎に基礎的調査活動としての事件動向調査が実施されている。今般第5次報告書がまとまったので、その内容が報告された。内容の総括としては、①民事第一審における「建物」の事件数の急激な増加、②弁護士の新規登録者数が減少している地域では急速な人口減少となっている反面、家事事件は増加しているという傾向が認められる、③事件処理アンケートでは、登録先の弁護士会を選ぶ要素としてワークライフバランスの点が増加している、④弁護士業務でもデジタル化が進行しておりリーガルテックの発達が弁護士業務にも大きな影響を与える可能性が高いといった諸点が指摘されている旨の報告があった。
  • 選択的夫婦別姓制度実現本部全体会議
     本部長代行として担当副会長である寺町副会長を指名し、2名の副本部長を指名するとともに事務局を設置したことが報告された。
     本部の活動としてこれまでの取組課題の整理がなされるとともに、院内学習会の開催予定と現在の情勢報告がなされた。
     一時は選択的夫婦別姓実現の機運が高まったが、総選挙で勝利した高市政権が旧姓使用の法制化に舵を切っているため、選択的夫婦別姓についてはどちらともいえないという態度に変わった議員が増えている。今後、民事・刑事ともIT化の進行に伴いGビズIDと連携してユーザ登録をする必要があると思われるが、現在は戸籍上の氏名を登録するという仕様となっているため、職務上の氏名を使用している会員については大きな問題が生じる可能性があり、今後最高裁と協議していく予定であることが報告された。
  • 審議事項6 電気通信事業者による、いわゆるキャリア決済等の倒産手続の場面における適正化を求める意見書案の件
     破産ないし民事再生手続を受任した代理人が、通信事業者に対し、携帯電話等の利用を継続するため通信役務提供契約による債務のみを弁済しつつ、それ以外の端末機器代金の分割金債務やキャリア決済債務の弁済をしないと求めた場合はこれに応じること、キャリア決済等の債務の弁済を受領する扱いを中止すること及び総務省に対して是正のための適切な措置を講じるよう求める意見書。
     理事からは携帯電話機器の分割払債務を支払わなくてよいという点に法的に根拠があるのかという質問があったのに対し、約款上は機器代金の分割金債務については所有権留保の対象となっていないので、法的には破産債権でしかないという見解が示された。加えて当該意見書は機器代金の弁済を禁止する趣旨ではないという補足説明がなされ、賛成多数で可決された。
  • 審議事項7 SNS型投資詐欺等による被害を防止するため、消費者の権利・利益を侵害するデジタル広告に対する法規制を求める意見書案の件
     大規模プラットホーム提供者に対し、①掲載広告が消費者権利侵害デジタル広告に該当するか否かについて必要な調査を行い、該当すると判断した場合は広告の掲載・送信をしないこと、②消費者からの申出等を契機として広告が消費者権利侵害デジタル広告に該当するとの判断に至った場合には遅滞なく掲載・送信を停止、防止する措置を講じること等を内容とする意見書
     掲載の裁判例や表現につき複数の理事から意見が出されたため、内容を改訂して再度明日の理事会に上程することとなった。
  • 審議事項1 2026年度日弁連委託援助業務事業計画書案並びに委託事業費及び委託事務費の支出の件
     法テラスに委託している法律援助事業につき2026年度の事業計画、委託事業費、委託事務費を定めるもの。原案通り可決・承認された。
  • 審議事項2 法律援助事業にかかる弁護士会に対する通訳人費用の補助の件
     2026年度の通訳人費用の補助金の支出について。昨年度は合計570万円程度。
     提案通り承認・可決された。
  • 審議事項3 弁護士過疎・偏在対策事業に関する規則中一部改正の件
     過疎・偏在地域において事務所の開設を容易にするため、設置数の要件を緩和する内容。
     提案通り可決・承認させた
  • 要請事項3 「日弁連サイバーセキュリティ月間」に関する件
     3.18はサイバーの日なので、3月1日から4月30日までをサイバーセキュリティと定めたので会員に周知してもらいたいとの要請がされた。
  • 報告事項7 弁護士会ウェブサイト等の脆弱性診断(ASM)の実施結果に関する件
     日弁連が各単位会のウェブサイトの脆弱性診断を行ったことが報告された。診断結果については個別に単位会に報告され、早速改善作業が行われたことが報告された。
     お試しではあるが、日弁連が全国の単位会分まとめて申し込んだため費用はかなり安くあがったとの報告があり、各単位会には引き続き診断を行うことが推奨された。
  • 審議事項4 公設事務所協定終了の件
     青森地裁五所川原支部管内に開設された公設事務所「つがるひまわり基金法律事務所」の弁護士が任期満了を迎えたがそのまま定着することとなったので、公設事務所協定を終了するという内容のもの。提案通り承認・可決された。
  • 報告事項3 2025年度若手弁護士カンファレンスの総括の件
     各弁連大会の前日に開催されている若手弁護士カンファレンスにつき2025年度の取組内容が紹介された。
  • 報告事項4 弁護士業務における生成AIの利活用に関する注意事項
     2025年9月理事会で報告した会内資料に、AIエージェントの普及を踏まえた事項が追加されたことが報告され、会員への周知が依頼された。
  • 審議事項11 ハラスメントの防止に関する規則中一部改正の件
     当該規則は会員による日弁連職員に対するハラスメントを対象としており、今回の改正は、実際の運用を踏まえ規則を整備するというもの。提案通り承認・可決された。
  • 再審法改正実現本部全体会議
     担当副会長及び鴨志田室長から現在の状況とこれまでの取組内容が報告された。4月10日頃には閣議決定を経て閣法として上程される見込み。総選挙後、議連も13名増加しているが、自民党の新人議員に議連に入会するよう働きかけをしてほしいとの要請がなされた。自民党内の司法制度調査会・法務部会で審査を受けるのが最大の山場となる予定(ヒアリングも実施される見込み)。村木厚子さんの新著「おどろきの刑事司法“犯罪者”の作り方」が必読の書であると紹介された。
  • 審議事項5 再審法改正実現本部設置要綱中一部改正の件
     設置期限を令和8年5月31日から2年間延長するもの。提案通り承認・可決された。
  • 審議事項8 自然公園法上の特別保護地区等における工作物設置等の許可において環境大臣の厳格な審査等を求める意見書案の件
     知床半島での観光船事故を契機に、環境大臣は半島先端に携帯電話基地局設備を設置する許可を出している(現在は地元の同意が失われているという理由で事業は中断)。
     本意見書は、行為の公益と自然環境保護の公益とを厳密に比較考量するという本来あるべき厳格な審査がなされずに本件許可が出されたことを問題とするもの。
     理事からは意見が出たため、内容を改訂して再度明日の理事会に上程することとなった。

【2日目】

  • 審議事項7 SNS型投資詐欺等による被害を防止するため、消費者の権利・利益を侵害するデジタル広告に対する法規制を求める意見書案の件
     昨日の理事会での議論を踏まえて執行部で内容が修正された。新聞広告に関する最高裁判例については脚注に移動し、本件で適用されるものではない旨を明記する等の修正を行い、修正案が可決・承認された。
  • 審議事項8 自然公園法上の特別保護地区等における工作物設置等の許可において環境大臣の厳格な審査等を求める意見書案の件
     昨日の理事会での議論を踏まえて執行部で内容が修正された。今回の対象地域が自然生態系の核心地域であり、意見書発出の必要性が高いこと等を加筆する等の修正を行い、修正案が可決・承認された。
  • 審議事項9 弁護士等の身分証明書の発行に関する規則中一部改正の件
     身分証の作成を依頼している印刷会社から機材の老朽化により顔写真をデータで入稿して欲しいとの依頼があったため、アプリを利用しスマホで撮影した写真データを提出するという方法に変更することとし、そのために規則を一部改正するという内容。
     スマホの撮影が困難な場合には街中の証明写真機「Ki-Re-i」で撮影することも可能(全国5400箇所に設置)。提案通り可決・承認された。
  • 審議事項10 綱紀委員会委員の委嘱の件
     綱紀委員会の委員の辞任に伴う後任委員の委嘱。提案通り可決・承認された。
  • 報告事項5 2025年懲戒請求事案集計報告の件
     2025年の懲戒請求事案の集計数が報告された。
  • 審議事項12 2026年度被感謝者及び被表彰者に関する件
     恒例に従い前年度である2025年度の会長・副会長を被感謝者とすること及び財界年数が長期に亘る被表彰者が提案通り可決・承認された。
  • 審議事項13 債権回収会社の取締役弁護士について、法務大臣に述べるべき意見の審議を4月1日より第1回理事会までの間、会長に委任する件
     提案通り可決・承認された。
  • 要請事項1 民事裁判手続等のデジタル化に関する件
     最高裁からTreeeSについては令和9年1月から名古屋高裁と名古屋地裁本庁及び同支部と簡裁で先行導入されるとの通知があった(令和9年度中には全庁導入予定)。TreeeSのアカウント登録の際にはGビズID(政府が提供する共通認証サービス)と連携してユーザ登録をすることが推奨されている(連携しない場合、個々の事件毎に煩雑な手続が必要となる上、後から連携させることは不可能。令和8年夏頃からGビズID取得に向けた周知・案内が行われる予定)
     GビズID取得の際にはマイナンバーカードがあれば簡易に登録できるが、カードがない場合には個人の印鑑登録証明書の提出が必要となる。また登録は戸籍上の氏名となるため、職務上の氏名を利用している会員についての取扱いを最高裁と協議しているところであるとの報告がなされた。
     「本人サポートの留意点」を改訂したことが報告され、会員に対してひまわりサーチに本人サポートの項目を登録して欲しいとの要請がなされた。一度システム送達受取人として登録されると、本人しか取下げができないので注意が必要。本人はシステム送達人の届出をした後も紙で書面を提出することができる。
  • 審議事項14 岡田事務総長からの辞任願の承認の件
     執行部交代に伴い現事務総長から辞任届が出され、理事会で辞任が可決・承認された。

     最後に副会長代表挨拶、事務総長挨拶、会長挨拶がなされた。

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