会務NEWS Vol.653
交通事故委員会
委員 谷 優貴
1.研修の概要
本研修では、高次脳機能障害についての基礎的理解から、臨床における診方、さらには自賠責保険における診断基準まで、幅広くかつ詳細に学んだ。講師には、御所南リハビリテーションクリニックの武澤信夫先生をお招きし、専門的な知見からご講演をいただいた。
2.高次脳機能障害の基本的理解と診方
高次脳機能とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程を指す。脳損傷後に生じる記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害といった諸症状は、外見からは分かりにくいため「見えない障害」とも呼ばれる。
診方のポイントとして、単なる認知機能の低下だけでなく、患者の日常生活における適応状況を多角的に評価することの重要性を再確認した。なお、相談者様が、お一人でご相談された場合には、病識がないときもあるため、そのようなときは、事故後から嗅覚に変化がないかを確認することで、事故によって高次脳機能障害になっていないか等を調べる取っ掛かりになることも学んだ。
3. 自賠責における診断基準と画像所見
自賠責保険における高次脳機能障害の認定実務においては、医学的客観性が強く求められる。特に強調されたのは、急性期におけるMRI画像で所見があることの重要性である。受傷直後の画像において、脳挫傷やびまん性軸索損傷を示唆する点状出血、浮腫などの有意な所見が確認できるかどうかが、その後の障害認定において極めて大きな比重を占めることを学んだ。
4. MTBIをめぐる医学的問題点
今回の研修で特に深く感銘を受けたのは、軽度外傷性脳損傷(MTBI)をめぐる医学的問題点についての議論である。MTBIは初期の意識障害が軽微であり、標準的なCTやMRIでは異常が検出されにくい。しかし、実際には高次脳機能障害を呈し、社会復帰に苦しむ症例が少なくない。
武澤先生の解説を通じ、画像所見の限界と、微細な脳損傷をいかにして臨床的に評価し、救い上げていくかという現代医学の課題について深く学ぶことができた。