《委員会レポート&今月のイベント》「公害紛争処理制度研修会~公害調停の活用について」のご報告

公害対策・環境保全委員会
委員 野村 龍志

1.はじめに
 去る5月22日(金)、公害等調整委員会事務局の審査官、八巻牧子様、調査官、石田耕一様を講師にお招きし、研修会を開催しました。
 公害等調整委員会は、総務省の外局として設置された行政委員会であるところ、公害紛争処理法(以下、「法」といいます。)に基づき、公害(法2条、環境基本法2条3項)に係る紛争について、あっせん、調停、仲裁及び裁定により、迅速かつ適正な解決を図ることを目的としているとのことです(参照法1条)。

2.公害紛争処理制度の概要について
 公害に関する苦情や紛争を、迅速・適正に解決を図る仕組みとして、(1)公害苦情相談制度と(2)公害紛争処理制度があります。
 (1)公害苦情相談制度は、暮らしに身近な市区町村、都道府県に相談することによって解決を図る制度であり、基本は市区町村の相談窓口での対応となり、複数の市区町村に跨る事案のときには都道府県の相談窓口での対応となるとのことです。
 公害苦情相談制度においては、公害問題について、市区町村等が住民の相談に応じ、その処理のために必要な調査を行うとともに、関係行政機関と連絡を取り合い、発生源側に対して改善措置の指導、助言を行うなど、苦情の受付から解決に至るまで一貫して処理を行っているそうです。この制度は、活用するにあたり手数料等の費用はかからず、迅速に解決を目指せるといった特徴があるところ、行政を通すことで相手方に氏名等を知られることなく解決を目指せるとのことであり、苦情相談のうち、7割ほどが1週間程で解決に至っているとのことでした。そして、苦情相談処理では解決が困難な事例については、後述する都道府県の公害審査会等や国の公害等調整委員会による解決が図られていくことになるとのことです。
 なお、公害苦情相談窓口では、公害審査会等や公害等調整委員会に対するあっせん、調停、仲裁、裁定に関する申請などについての助言等も行われているそうです。
 (2)公害紛争処理制度は、公害紛争の処理・適正な解決を図るため、司法的解決とは別に、公害紛争を処理する機関として、各都道府県に公害審査会等が、国には公害等調整委員会が置かれています。
 公害審査会等においては、事案に応じてあっせん、調停、仲裁が実施され、公害等調整委員会においては、さらに、裁定が実施されているところ、裁定には、責任裁定(損害賠償責任の有無・賠償額についての法律判断が行われる。)と原因裁定(加害行為と被害発生との間の因果関係についての法律判断が行われる。但し、加害行為に関する違法性や故意、過失の判断は行われない。)の二種類があるとのことです。
 責任裁定(法42条の12)は、被害者のみが申請することができるところ(法42条の12第1項)、全部又は一部認容の責任裁定がなされた場合、裁判所は、原則として無保証で仮差押え及び仮処分を命じることになっています(法42条の22)。また、責任裁定の申請には、時効完成猶予効も認められています(法42条の25)。これに対し、原因裁定には時効完成猶予効が認められていません。
 裁定手続においては、必要に応じ、職権で、専門委員の任命がなされたり、現地調査の実施・資料収集が行われるところ、裁定の申請人は費用負担を求められないとのことです。また、公害に係る被害に関する民事訴訟において、受訴裁判所が必要と認めたときは、公害等調整委員会に対して原因裁定の嘱託がされることが認められており(法42条の32)、裁定結果が記された裁定書は調査嘱託の結果として証拠化されるとか、当事者が書証として提出する方法で証拠化されることが想定されています。また、その他の公害等調整委員会で収集・作成された証拠資料は、当事者が必要に応じて証拠化することができるとのことでした。

3.公害紛争処理制度の今後の活用について
 講師の方々によると、近年の傾向として、騒音、振動、悪臭に関する事例が多い傾向であり、比較的規模は小さいものの、長期間にわたって被害が生じており、また、感情的対立が強い事例が多い傾向であるとのことでした。
 公害紛争について、迅速かつ適正(柔軟)な解決を図ることが期待できる公害紛争処理制度の活用が求められることを学ぶことができる研修でした。

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